子どもの生活スキル
- 「スプーンや箸がうまくもてない」
- 「ハサミが上手に使えない」
- 「字が書けない」
- 「手洗いをしない」
等の生活スキル(生活動作)、教え方に悩まれてないでしょうか?
実は、生活動作がうまくいない背景は、一人ひとりのお子さんによって原因は異なります。ですので、お子さんの個性に合わせ、無理のない目標をたて、適切にアプローチしていくことが大切になります。
本記事では、お子さんが生活動作を習得していくための、効果的な5つアプローチについての概要を説明していきます。
お子さんの個性に合わせた効果的なアプローチや、具体的な関わり方まで知りたいと思われるお父さん・お母さん、または、園の先生等は、最後まで読んでみてください。
少しでもお多くのご家庭の悩みを解決したくて発信しているので、この記事が役に立つと思ってくだされば、是非SNSでのシェアをよろしくお願いします。
- アサヒです。臨床心理士・公認心理師です。
- 子育て相談&発達障害支援を10年間続けています。
- 年間約1500件以上の子育て支援・相談をしています。
- 教師・保育士・小児の作業療法士がいる子育て支援一家で生活してます。
- 私自身、2人の子どもを毎日マインドフルに子育てしています。
- さまざまな専門家(小児科医・児童精神科医・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士等)がいる職場で、働いているので、心理学に基づいた専門的なアプローチだけでなく、常に目の前のお子さんに合わせた多様な関り・アプローチを実践しています。
- 同じ悩みでもお子さんやご家族のスタイルに合わせた対応をしています。
- お子さんにぴったり合った子育てをみつけてもらいたくて発信しています。
① できた所をほめる
② 環境を整える
③ 目で確認できるようにする
④ スモールステップをつくる
⑤ ごほうびリスト(トークンエコノミー)を使う
① できた所をほめる
これは、まず、逆を考えてみましょう。つまり、できない所を怒られることですね。何かを身につけようとしている時に、失敗したら怒られたり、責められたり、嫌な顔をされると、大人でも嫌ですよね。お子さんの場合は、まだ幼いので余計に、自信をなくしてしまったり、他にできていたこともできなくなってしまったり、消極的になったりと実は、お子さんのさまざまな可能性と育ちにくくしてしまうリスクがあるんです。叱るに関しては、一歩間違えてしまうと、それをマネする、うそをつくようなる等々、お子さんの成長に影響がでてしまう可能性があるので、取り扱い注意なんです(“叱る”だけで伝えたい事がありすぎるので、また別の記事で解説させて下さい。)
ですので、まずは出来た所をほめて、自信を持たせ、「もっとやりたい」という意欲を育ててあげることが大切なんです。
〇効果的なほめ方
「子どもの成長を伸ばすほめ方のコツ」や、「しかりの悪循環から抜け出すコツ」について、詳しくは、また別の記事で紹介したいと思っていますが、子どもに何かを教えている時のほめ方として、次のようなほめ方も効果的ですので、ぜひ使ってみてください。
① 結果より頑張りをほめる: 「〇〇まで頑張っていたね」「難しいのに、勇気をだしてや
ってみれたね」
② 前回より成長したところをほめる: 「前は〇〇が苦手だったのにできるようになって
きたね」「いつも怖がっていた所もやれていたじゃん」
③ 頑張った所にポジティブな感想を伝える: 「苦手なピーマン一口でも食べてくれて、
お母さん嬉しかった。」「自分で洗えるところが増えてよいと思うよ」
このようにして、新しく何かを習得している時は、お子さんのやる気・意欲を高めていけると、自信がもてるようになります。言葉の育ちと似ていますね。
“ミスしても怒られなかった”という安心感と、お父さん・お母さんが応援してくれている「姿勢」によって、子どもの挑戦する気持ちが育っていきます。
ほめることは、生活動作とやる気の成長とまさに、一石二鳥なんです(なので真っ先に紹介したかったんです)。小さなことでもできたらほめてあげて、自尊心を育んであげて下さい。
② 環境を整える
次に環境ですが、どこで何を教えるかにもよるのですが、例えば「椅子に座って食事ができるように」サポートしている時に、テレビがついていたり、気になるオモチャがあれば、そちらに注意が向いてしまって、立ち歩いてしまう可能性があります。「こんなことできるようになってほしいな」と思った際は、それに集中できるよう、まずはその場所を整えてあげましょう。
お子さんには、言葉で言われても分からない、色んなところに注意が向きやすい、見せた方が伝わる、音や光に敏感等々、さまざま個性や、個人差があるので、お子さんに合わせた環境作りが大切です。以下に集中しやすいポイントをまとめますので、参考にしてみてください。
① 広すぎない空間にする: 外運動は別ですが、部屋の中でサポートする際は、広すぎることで不安になるお子さんも多いので、6-8畳を目安に空間を仕切ってあげると集中できるでしょう
② 短時間で取り組めるようにする: 5-10分くらいの短い間隔で、「ちょっとやってみよう」と目標を決めてあげた方が集中して取り組みやすいです。
③ 不快な刺激(うるさい・まぶしい・くさい)を調整: お子さんによってはこれらの不快な刺激に過敏な子も多いんです。よく誤解されてしまうのでは、これはわがままでもなんでもなく、その感覚器官が通常よりもよく感じるようになっているので、実は配慮が必要なんです。
④ 好きな物は見えないように: 興味をそそるものがあると、それで遊びたいのに、遊べない。今やっていることも中途半端になるなど、集中できません。
⑤ 見る・聞こえる刺激は減らしておく: ④と似ていますが、これも色んな事に気がそれやすいお子さんからすると、集中できなくなってしまします。
⑥ できれば1対1で: お子さんによっては、個別で丁寧に伝えた方が分かりやすい子がいます。
それぞれ、ご家庭や保育園等で、できる事とそうでない事もありますが、参考にしてみてください。また、お子さんによっては、「特定の場所でしかやらない」「自分の決めた場所や物」でなければ活動に取り組めないというお子さんもいます。そうしたお子さんには、可能な限り、そのこだわりを尊重してあげ、お子さんがまずは「安心」して取り組める環境を整えてあげて下さい。
③ 目で見て確認できるようにする
手順ややり方を前もって指導しても忘れてしまう、言葉かけだけでは覚えられない伝わりにくいお子さんも実は沢山います。
手順・やる事リストで確認
「手洗いの手順」「朝のやるリスト」等、やり方や活動の流れが見てわかるようになっていると、まわりの人に言われなくても自分で確認しながら取り組めるようになりますし、大人も「次はこれ!」「何回も言っているでしょ!」と注意する回数が減るので、おススメです。文字が読めるようになれば、ホワイトボードや付箋等に文字で簡単に書いておくのもいいですし、やる事リストは絵やイラスト、写真等で見せるようにしておいても良いと思います。
お手本や見本で確認
お子さんに動作を覚えてもらうためには、近くにいる大人が、お手本を示してあげ、方法を教えることが大切です。「外から帰ったら、まずは手洗いするんだよ」と、日常的にやっているんだよという姿をみせてあげたり、「箸はこうやって持つんだよ」と、お手本となる動作をやってみせてあげると良いでしょう。特に歯磨きや手洗いなどの習慣にしたいことは、毎日やっているところを見せることで身に付きやすくなりますし、「家に帰ったら手洗い」「ご飯食べたら歯磨き」などと、「この後はこれ」と行動をセットにしてあげると、より自然と身に付きやすくなるでしょう。
④スモールステップ
最初から完璧な動作ができるようになってもらう事を目標にしてしまうと、出来ない事で本人のやる気もなくなってしまいますし、関わる大人もイライラしてしまいます。
ですので、何か動作ができるようになるには、一気にゴールを目指すのではなく、ゴールまでのプロセスをいくつかの段階に細かく分けてあげて、それぞれの段階に小さなゴールを作ってあげましょう。
このように、目標とする事柄を段階ごとに細かくわけ、少しずつ、習得できるようにする考え方のことを「スモールステップ」といいます。
難しい生活スキルの獲得であっても、スモールステップを活用することで、少しの進歩(スプーンを手でもった、着たい服をもってきた等)に対する達成感をしっかりとお子さんと共有し、次の段階へ向かうモチベーションを高めてくれます。実際に「服を着る」という動作を例にみてみましょう。
ステップ1: 大人が服を持ってきてあげ、服をかぶらせて頭を通して、両うでのそでも通してあげ、最後のすそを下すところをお子さんが行う。
ステップ2: 大人が服をもってきてあげ、服に頭を通し、片うでを通し、もう片方はすそをもってあげ、うでを通すのはお子さんがやる。すそおろしも自分でやる。
ステップ3: 服を持ってきて、頭に通すまでを大人がお手伝いし、残りをお子さんが行う
ステップ4: 自分で服を着れるようになる
こうすることによって、お子さんはステップを通過するたびに褒められ、達成感を得ることができます。時間はかかりますが、お子さん自身も自分でできるようになったことを実感できるので、モチベーションを維持したまま、最後まででき、自信を持てるようになります。
「スモールステップ」はとても有効な方法で、さまざまなステップの作り方がありますので、また別の記事でも紹介していきたいと思います。
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⑤ごほうび表(トークンエコノミー法)を使う
トークンエコノミー法は、心理学の行動療法の一つで、お子さんの「やって欲しい」行動を増やしたり、より強くしたりする為に小さな「ごほうび」(トークン)を与え、「ごほうび」が一定の量にたまったらより大きな「ごほうび」を与える方法です。
朝のお着替えを自分でやったらキャラクターシール一枚(小さなごほうび)を与え、言葉でもほめてあげる。シールをカレンダーや、「ごほうび表」に貼っていき、10回自分でできたら、大きなごほうびに大好きなチョコレートを1個買ってもらえると目標を決め取り組む。
目標を立てて頑張り、できたらごほうびと交換できるというシステムなので、お子さんも自分が行動をして「できた!」が目に見えて分かるので、モチベーションがあがります。
他にも、何をいつまで頑張ればいいのかという目標までの見通しがたてやすいですし、毎回お菓子をあげたり、何かやってあげたりしなくてもいいので、お父さん・お母さんの負担もそこまでかかりません。お子さんによっては、シールやスタンプを集めること自体が楽しくなって、自分から進んでこちらの「やって欲しい」行動をしてくれるようになります。
お子さんにとってもメリットがあり、目標に向かって約束の期間頑張ることで、達成感が得られやすい方法です。
注意点としては、
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必ずお子さんと一緒に話し合って、目標を決めましょう
-
目標は具体的な行動にしましょう 〇→朝起きたら着替える、×→朝はいい子
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シールをあげるだけでなくほめてあげて下さい。
-
出来なくてもしからないで、あげましょう。
トークンエコノミー法は、親子で楽しみながら、達成感も得られて、無理なく続けていくにはぴったりの方法です。お子さんの「できた!」の瞬間を一緒に喜べるチャンスをたくさん作れるのでおススメですよ。
トークンエコノミー法と聞くと、なんのこっちゃ、難しい事言われても分からないと思われますが、「ポイントカード」や「〇〇ポイント」と聞くと、何となくイメージできるのではないでしょうか。実は、「ポイントカード」もトークンエコノミー法を用いています。
お買い物するとポイントがもらえて、ある程度たまると商品を交換できたり、そのポイントでお買い物ができたりしますよね。これはお店にとってお客様に「やって欲しい」行動は“自分のお店で商品を買ってもらう”という行動です。「やって欲しい」行動をした結果、お客さんにとっても嬉しい結果が待っていると、そのお店でどんどん買い物したくなりますよね。ポイントカードや〇〇ポイントといった、トークンエコノミー法は、やって欲しい行動を増やす・より強くするにはもってこいなんです。
まとめ
お子さんが生活スキルを習得していくための、効果的な5つアプローチについてのそれぞれの概要と具体的な関わり方について説明してきました。いずれの方法も専門家が支援で実際に使用することがありますので、子育てをする上で、知っておいてて損はないと思います。
5つのアプローチは単体で使っても効果はありますが、組み合わせるとより、覚えやすくなるかもしれません。いずれのアプローチにしても、大切な事は親子で楽しみながら進めていくことです。もちろん、お子さんの個性に合わせていくのであれば、これらを組み合わせていくことも必要になるかもしませんのでいくつか例をあげておきます。
他にも色んな組み合わせがあると思います。ぜひ、お子さんに合わせてオリジナルなアプローチを作ってみてください。
本記事で紹介した効果的な5つのアプローチは、別の記事でそれぞれより、詳しく紹介してきたいと思いますので楽しみにしていていただけますと幸いです。
読んでくださった皆様の少しでもお役に立てたら嬉しいです。