スプーンが上手に持てずに、食べさせてもらっていたお子さんが、自分でスプーンを持って、食べたいものを自分で食べられるようになるのは、とても喜ばしい事ですよね。お子さん自身も、自分で食べるということは、単に生活スキルの獲得というだけではなく、自分のしたい事を意思で決める事ができたという、「心の成長」や「自立心が芽生える」大事な発達の第一歩となります。
そんな第一歩でもあるスプーンを、お子さんの自立心を育てながら、上手に練習していく方法があれば試してみたくないですか?
多くのお父さん・お母さんは、どうせ「手づかみ食べからでしょ」と、思われるかもしれません。
もちろん、手づかみ食べは大切ですが、手づかみ食べができない、させたくても余裕がないお父さん・お母さんが多いのも事実です。
そこで本記事では、お子さんがスプーンを使えるようになるまでの、スプーンの持ち方の発達について解説していくとともに、遊びを通した効果的な練習方法や、生活スキルを練習していくうえでのお父さん・お母さんの関りのコツ、「手づかみ食べ」に代わる代替案もご紹介したいと思います。
手づかみ食べができなくても、上手にスプーンが持てるようになる便利グッズの紹介もしていますので、お家のお子さんに合った方法を試してみて下さい。
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- アサヒです。臨床心理士・公認心理師です。
- 子育て相談&発達障害支援を10年間続けています。
- 年間約1500件以上の子育て支援・相談をしています。
- 教師・保育士・小児の作業療法士がいる子育て支援一家で生活してます。
- 私自身、2人の子どもを毎日マインドフルに子育てしています。
- さまざまな専門家(小児科医・児童精神科医・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士等)がいる職場で、働いているので、心理学に基づいた専門的なアプローチだけでなく、常に目の前のお子さんに合わせた多様な関り・アプローチを実践しています。
- 同じ悩みでもお子さんやご家族のスタイルに合わせた対応をしています。
- お子さんにぴったり合った子育てをみつけてもらいたくて発信しています。
スプーンが上手に使えない理由
1歳ごろになってそろそろスプーンを使うかなと思っても、なかなか上手に使うのが難しいお子さんがいます。それには以下のような理由があるかもしれません。
1:食器を手で持つ、支える習慣がない
お皿が固定されていないと、スプーンを使ってもお皿がぐらぐらと動いてしまって、すくいたくてもすくえません。スプーンを動かしてもお皿がくるくる回ってお子さんもイライラしてしまう事があります。
2:肩やひじ、手首の動作がぎこちない
スプーンで食べ物を口まで運んでいくには、食べ物を口まで運ぶ、肩やひじの大きな動きと、スプーンを握って食べ物をすくう、手首の小さい動きが協応していていないと、上手に食べ物をすくえません。
力加減の難しい
食べ物をすくおうとするがあまり、ついつい、力が強く入ってしまって、上手にすくえなかったり、逆に力が弱すぎてスプーンを落としてしまったり、力の入れ加減がまだ難しいとスプーンですくうという動作が難しかったりします。
スプーンの持ち方: 3ステップの成長
ステップ1 にぎり持ち
5本の指で上手持ちでにぎる状態。この状態ではまだ、手首が固定されやすく、食べ物をすくいとるのが難しいです。
ステップ2:3本指(操作する指)持ち
上手持ちですが、中指と人差し指、親指で握る状態です。えんぴつ持ちになる前の段階で、徐々に食べ物をスムーズにすくえるようになります。上手持ちなので、まだ手首を細かく動かして上手にすくったり、口の中にこぼさずにいれるのが難しいことがあります。
ステップ3:えんぴつ持ち
下手持ちで、操作する指を使って手首を動かせる状態です。この状態がスプーンの持ち方の最終段階です。
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スプーンを上手に使えるようになるために
一番のおススメは「手づかみ食べ」の経験が重要だと思います。
これはお子さん自身が食べながら自分で学習し成長していけるからです。ですが、抵抗のあるお父さん・お母さんも少なくありませんし、実際、そんな事は分かっているけど、忙しくて、手づかみ食べどころじゃないという方の相談を多く受けています。ですので、まだ手づかみ食べを始めていないお父さん・お母さんに、まずは手づかみ食べのメリットをご紹介しつつ、別の方法が知りたいというお父さん・お母さんに、「手づかみ食べ」に代わる代替案もご紹介したいと思います。
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手づかみ食べのメリット
もし、今までお子さんに食事を食べさせていた事が多かったから、ちょっと手づかみ食べをチャレンジしてみてもよいかもしれません。
五感(視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚)をすべて使える。
触ってみて、熱い・冷たいといった温度を感じる事ができますし、口の中では固い・柔らかいといった感触が分かります。食べ物の色や形を見て上手に持てるようになったり、食べている時の食べ物の音を聞いたり、手に残った食べ物の匂いを嗅いだり、味の違いを楽しんだり、脳の広範囲が刺激され、さまざまな成長が促されます。これらは、オモチャや本だけでは経験できない体験をお子さんに与えてくれます。
ちょうどよい力加減が分かる
強く握りすぎてしますとつぶれて食べないので、繰り返し手づかみ食べをしていくうちにちょうどよい力で食べ物を持てるようになります。ここがスプーンやフォークといった道具を使う際にとても重要です。
自分で食べれる一口の加減が分かるようになる。
食べさせてもらう事自体は悪い事ではないですが、手づかみ食べを始めると、一度にどれぐらいの量なら食べれるのか、自分で食べながらコントロールすることができるようになります。ですので、初めのうちは口に入れる量が多すぎて吐き出してしますお子さんもいます。そのように「今は多すぎたな」と自分で量の感覚が分かるようになるので、スプーンを使うようになっても、一口量の加減が身についている事が多いです。
力のコントロールができるようになる。
食べさせてもらうより、手で食べ物をつかんで、口の中まで運ぶ練習を、自分で毎回、何度も行うことで、目で食べ物を観て、手でそれを上手につかんで、こぼさず口の中に入れるという協応した動きを経験していけます。ですので、手先の細かい動きの感覚が育つだけではなく、握り方のコントロールも上達するので、スプーンへの移行がスムーズになるんです。
小児科医の見解もありましたのでご参考にしていただければと思います。
⇒脳の発達にもいい影響が!手づかみ食べのメリットと、始めどき・始め方
手づかみ食べに代わる練習方法
お子さんによっては、食べ物を手で触ることを嫌がる方もいらっしゃいますし、先の例でもあげたように、お父さん・お母さんに、抵抗がある方や、忙しくて手づかみ食べに時間をさけない方もいます。そのような事は珍しい事でもなんでもない事ですし、ご家庭の数だけ多様な関わり方があって当然です。ご自分の子育てにピッタリくるやりやすい方法をみつけていきましょう。
手づかみ食べに代わる練習方法として、一番大切な事は、周りの環境を整えることです。
わざわざ口に入れる量をコントロールしなくても、食器がそういう風にできていれば、一口量は気にしなくてもいいからです。このように、物理的に使う物をお子さんに合わせる事も重要ですのでいくつか紹介します。
食器を固定する
お皿を手で支えて持つ習慣は、大切です。手を添えてないとお皿が動いて食べれないからです。お皿をスプーンとは反対の手で支える、手を添えておく習慣もないし、今さら手づかみ食べは汚れるから嫌だなという場合には、底にグリップのあるお皿を選んであげましょう。お皿が固定されていることで、食べ物は一気にすくいやすくなります。
口に合う大きさや浅いスプーン
スプーンの先はお子さんの口の大体1/3から2/3ぐらいの大きさが口に入れるにはちょうどよいです。深いスプーンですと、一口量が調整しにくく、口に思い切り入ってしまいますし、すくった食べ物を全部食べ切れない場合がありますので、浅いスプーンがおススメです。
スプーンの柄は太くて曲がったもの
肩やひじ、手首の動きがぎこちない場合、太い方がスプーンの柄は握りやすいです。スプーンの柄が曲がっていた方が、手の協応動作をスムーズに、単純化してくれます。単純になると、複雑な協応をしなくても、食べ物を口まで運びやすくなるので、お子さんからしても「できた」という達成感を味わえるかもしれません。
中々スプーンを持つことが難しいお子さんには以下のようなスプーンは持ちやすく便利です。これで一発で矯正できたというお子さんもいました。
食器の位置やテーブルの高さの調整
よそ見をして食べ物をこぼすのを防ぐためやしっかりとスプーンを操作するために、テーブルと椅子が高さの調整や固定されていた方が安定します。まだ姿勢も崩れやすいので、足が床についていることも大切です。体が安定してないと、スプーンの操作や力のコントロールが難しくなるからです。大人も姿勢を崩して食べたりするのは難しいですよね。
その上で、イスとテーブルが固定されていると、便利です。家では子どもが小さい頃はずっとテーブルと椅子がセットのハイチェアを使っていました。
何が良いって、食べ歩きや寝転がったりしないので、スムーズに食事が終わる所なんかもおススメです。
食事以外では砂遊びや水遊び、粘土遊びもおススメです。
手で砂を掘ったり、山を作ったり、バケツの水を持ったり、粘土で力のコントロールを学んだり、食器の操作のような生活スキルのすべてがすべて食事場面で完結するわけではありません。お子さんにとっての遊びこそ、自分を成長させる無限の可能性がありますので、このように、いろんな感覚を刺激してくれる遊びからも脳が刺激され、発達が促されます。そして、結果的にスプーンが上手に使える練習になりますので、試してみて下さい。
持ち方のステップアップ
スプーンの持ち方を最終的にえんぴつ持ちにステップアップしていくには、親指と人差し指で「つまむ」動作が必要になります。ですので、指先でつまむ練習を遊びを通して、楽しく慣れていけることが大切です。おススメの練習を紹介します
・ひも通し
・棒通し
・ビー玉遊び
・マグネットオモチャ
・スポンジ・ストロー入れ
上記のようなオモチャを買う事もできますし、自分で作る事もできます。実際に多くの療育施設ではお手製のオモチャが多いような気がします。私自身もお子さんの支援や、我が子の為にも作る事が多いので、また別の機会で紹介させて下さい(ハマると結構楽しいんです)。
※レゴブロックはいろんな意味で万能!?
手作り以外でも沢山のオモチャや遊びを紹介をしましたが、お子さんの手先の器用さや創造力を育てていくには、やはりレゴブロックがおススメです。
つまむ動作はもちろん、見本と一緒に合わせる練習や自分で創造して遊びを広げる遊び等、一度にさまざまなお子さんの能力を刺激してくれるからです。
1歳から遊べる「レゴデュプロ」も長く使えますし、男女問わずに、お子さんが夢中になってくれるので、まさしく万能と言えるでしょう。
まとめ
スプーンから指の発達は進んでいく!?
スプーンを使えるようになる事で、肩やひじの大きな動きと手首の細かい動きが協応できるようになります。それに慣れてくることで、お子さんはさまざまな成長を見せてくれます。操作する指を器用に動かせるようになるからです。大きな動きと細かい動きが協応し、手指の動きが発達していくと、
・えんぴつの持ち方
・歯ブラシの持ち方・使い方
・箸の練習
以上のような力も上達してきます。
自信とやる気をサポート
お子さんの個性を伸ばす育て方でも解説しましたが、お子さんの伸びてきている所を手伝ってあげる事は大切です。スプーンの場合では、手づかみ食べやそれに代わる方法を試し、ご自分の子育てのスタイルやお子さんに合わせた形でのお手伝いをみつけてみて下さい。
何よりもお子さんが、「自分で楽しく食べる事ができた!」と思ってもらえることが大切ですので、年齢やうまい下手にかかわらず、「こんなもんでよしとしよう」と大人も余裕をもって関わってあげて大丈夫です。
お父さん・お母さんもご自分に優しく
ついつい、このような生活スキルの獲得になると、周りのお子さんと比べてしまいやすいですし、いわゆる取り組む目安となる年齢になってもやらない事で焦ってしまうお父さん・お母さんの気持ちも十分に理解できます。それだけ一生懸命子育てに取り組まれているのは素晴らしいことです。
ですので、まずは、ご自分の為のリラックスできる時間、気分転換の時間を作ってあげたり、頼れるところは誰かに頼ったり、ちょっとした手抜きをすることも大切です。
癒しの時間や、贅沢してご自分にご褒美をあげて下さいね。
焦らずというのは難しいですが、このように、ご自分にも優しく子育てができるよう、これからも、お子さんや多様なご家庭の子育てスタイルに合う方法を発信していきますので、少しでもお役に立てたら嬉しいです。
最後まで読んで下さりありがとうございました。